info_page
● 有限会社 トマタニ構造設計の構造Q&A(3ページ目)

今回は地震に強いマンションのポイントについて、構造設計一級建築士の目線からお答えさせて頂きます。


11. 高層、超高層マンションの外壁のヒビ亀裂は、どのようにして修理するのですか。
中高層系(6〜15階程度まで)の場合はビティ足場を組むか、ゴンドラ付きのクレーン車を使って修理します。超高層系は屋上からゴンドラを吊り下げて修理すると思います。超高層系の修理の方が施工は困難となります。





12. 階が上に行くほど、揺れるのはなぜでしょうか。
各階の床の変位量は地盤の水平変位にその階の水平変位を加算した値となります。例として、地盤が30cm変位し、各階が3cm変位したと仮定した場合。10階建てでは1階が30cm、10階が57cmとなります。階が上に行くほど床の変位量が大きくなるため揺れが大きく感じられます。





13. 「マンション、ビルは揺れた方がいい」と言いますが、本当でしょうか。今回の地震ではやたら上階の方は不安感、地震酔いに悩まされ、引越しを考えている人も多いと言います。やはり、上のほうより下の階の方が安全なのでしょうか。
建物は揺れないに越したことはありません。免震構造が良いと考えるのは揺れが小さいことによります。現在のマンション設計の主流はある程度の揺れを考慮しています。これは、揺れた方が良いのではなく、揺れても壊れないように建物に粘りを持たせる設計法です。高層系の建物を低層系の壁式構造のように揺れを抑える設計は現実的ではありません。特に長辺方向は窓を大きくとるため柱と梁による構造となり揺れは起こります。
現行の設計基準では大地震で大きく揺れても柱と梁が曲がって粘るため建物が倒れる事はありません。粘りを担保する数々の構造規定が構造関係技術基準書の中に明記してあります。不安を安心に変えることが重要です。船に乗っていると思えば少し楽になるのでは。又、上階より下階の方が安全なのでは、の質問ですが、地震による建物被害は一般的には下階の方が多くなります。下階の方が安全とはなりません。上階では揺れは大きいですが、構造体の被害は少なくなります。






14. 高層マンションでは、かなりの時間、揺れが続いたと言います。なぜそんなに長い時間揺れるのでしょうか。そのような建物が崩れる危険性は少ないのでしょうか。
東日本大震災の場合は地震の揺れそのものが長かったため建物も長く揺れていたのであり、地盤の揺れが止まっているのに建物だけが揺れているのではありません。但し、超高層マンシュンの場合は建物の固有周期が長いため、長い周期の地震波に共振して長い揺れが発生する場合があります。この現象は最近「長周期地震働と超高層建物の関係」として地震、耐震工学の学識経験者などから問題提起がなされております。
長い揺れで建物が壊れる危険性はどうか。とのことですが、現行基準で設計されたマンションであれば今回程度の揺れの長さにより柱、梁の耐力が低下することはないと思います。ひび割れなどにより少し耐力が低下した場合でもその状態を維持して建物が変形する設計となっております。建物が倒壊することはありません。安心して下さい。






15. 「地震に強いかどうかを見抜く際には、ここに注意を!」ということがあれば教えて下さい。
現在の中高層マンションの設計は高度な構造計算に基づき行われているため、一般の方が建物の外観、内観を見ただけで地震に強いかどうか見分けることは困難だと思います。イメージで申しますと、見た目で柱、梁が太くて、大きいと感じられる建物は強いのではと思います。又、低層系の場合は壁の多い建物は安心感があります。




 構造Q&A1ページ目 に戻る。


Page Top